「前に聞いた『パワーレベリング』のやり方を、本格的に教えてくれ」

 俺は自宅に戻るなり、祠に直行。
 リンにそう切り出した。

「へえ、例の女の子にかけるんだね?」
「彼女はもっと強くなりたい、って言ってる。彼女が望むなら──俺はその方法を教えたい」

 以前に聞いたところでは、竜王のパワーレベリングは相手がそれを受け入れてくれなければ使えないということだった。
 マナはおそらく受け入れるだろう。
 望むだろう。

「だから俺は、その方法を習得したいんだ」
「いいよ。ただ、この力はすぐに使えるってものじゃない。それなりの訓練が必要だ」

 と、リン。

「訓練?」

 どれくらい時間がかかるものなんだろう。
 あんまり時間がかかりすぎるようだと、マナが冒険者学校を卒業してしまうまでに間に合わない、ってことも──。

「ああ、別に五年も十年もかかるような代物じゃないよ」

 リンが笑った。

「上手く行けば数日から数週間くらいでマスターできるよ」
「上手く行かなかったら?」
「最悪、魂が消滅──あ、いや、なんでもない」
「魂が消滅とか言わなかったか!?」
「大丈夫、大丈夫。僕はレオンを信じてるから」
「否定しないのかよ!」

 一体、どんな訓練なんだ……。
 不安になってきたぞ。

 まあ、とりあえず内容だけでも聞いてみるか。



「要領としては、僕が君に施した【レベル移行】に近い術式なんだ」

 リンが説明を始めた。

「……それってお前が失敗した奴だよな?」
「あはは、まあ僕は大雑把な性格だから失敗しちゃったけど、普通にやれば大丈夫だよ」

 本当か……?

「詳しくは『彼』に聞いてみるといいよ」
「『彼』?」
「パワーレベリング系の術式は、もともと彼が開発したものだからね。僕も彼に教わったんだ」
「お前の……師匠みたいなもんか?」
「この術式に関しては、ね。逆に僕が彼に教えた術式だってあるし。竜王同士で術の情報交換や研究なんかをしてるんだよ。今はもう無理だけど、遠い昔──まだ竜王たちが健在だった時代に」

 リンが遠い目をした。
 伝説の、七大竜王ってやつか。

「で、本物じゃないけど、彼の残留思念みたいなものを呼び出せるんだ。それにパワーレベリングを教わろうってことさ」
「なるほど……」

 リンの説明にうなずく俺。

「じゃあ、どんな竜王を呼び出すんだ?」
「ふふふ……七大竜王の中でもっとも強く、もっとも恐ろしいと謳われた存在──『暗黒竜王(あんこくりゅうおう)』さ!」