さあ、お仕置きタイムだ、ジェイル!

「これは入学した日に校舎裏でいきなり蹴り飛ばされた分!」
「ぐはっ!」
「これは俺の教科書を火炎魔法で燃やされた分!」
「ごほっ!」
「これは食堂で俺の昼食をわざと床にぶちまけられた分!」
「げふっ!」
「そして、これは──演習の授業で教官に見えないように殴られた分だ!」
「ぐあああっ!」

 俺の斬撃に吹っ飛ばされるジェイル。

 訓練用の剣とはいえ、俺のレベルで振るえば、真剣以上の威力のはず。
 かなり手加減して打ちのめしたが、それでもジェイルはフラフラだった。

「……ちょっとやりすぎたか」

 さすがに罪悪感がこみ上げた。

「くそ、てめぇ……ふっざけんなぁぁぁぁぁぁっ!」

 ……と思ったら、案外元気だ。

 ジェイルは起き上がって、俺をにらみつけている。
 さすがに耐久力が並じゃないな。

 とはいえ、根本的な実力差は明らかだった。
 ジェイルには、どうあがいても勝ち目はない。

「立場逆転、だな」

 俺は悔しげなジェイルを見据えた。

「ありえねぇ……お前ごときにこの俺が……この俺が……こんな……!」
「お前がいつもやっていることが、そのままお前に跳ね返ってきただけだ。これに懲りて、日ごろの行いを改めてくれ」
「うるせえええええええええっ!」

 ジェイルがキレた。

「剣が駄目でも、魔法ならどうだ! 燃やし尽くしてやる!」

 と、右手を突き出す。

 ごうっ……!

 周囲の空気が灼熱していく。

「おい、これは近接戦を学ぶための授業だろ。魔法の使用は禁止だって、教官が──」
「知るかよ! 【ディーファイア】!」

 ジェイルが火炎の渦を放つ。

 熟練者が操れば、鉄をも溶かす中級火炎魔法だ。
 安全用の魔導装置がなければ、即死しかねない危険な術である。

 というか、装置があっても直撃すると大怪我するんじゃないか……?

「まあ、確かめる気にはならないけど」

 俺は左手を突き出した。
 頭の中で、すべてを跳ね返す壁のイメージを思い浮かべる。

「【エクスプロテクション】」

 ごうっ!

 俺が作り出した魔力の壁は、ジェイルの火炎をあっさり弾き散らした。

「ば、馬鹿な上級防御魔法だと!? しかも無詠唱で──」
「次はこっちから行くか? お前が攻撃魔法なら、俺も──」

 右手を掲げる。

「【エクスファイア】」

 上級火炎魔法を空に向かってぶっ放した。

 ごおおおおおおおおおううううんっ……!

 上空数百メートルで大爆発が起きる。

「あ……ああ……」

 さすがにジェイルは腰を抜かしたようだ。

 じわり、と股間に染みが広がる。
 恐怖で失禁したか。

「次は、当てる」

 軽くおどしておく。
 もちろんハッタリだけど。

 こんなものを撃ちこんだら、いくら安全装置があってもジェイルの体は消し飛ぶだろう。

「ひ、ひいいいいいいいいっ、参りましたぁぁぁぁぁっ!」

 ジェイルは悲鳴を上げた。

 やっぱり、ちょっとやり過ぎたかな……。
 俺は少しだけ反省した。

 レベル1000の能力は──手加減が難しい。