「わぁこれ、全部の飲み放題?」
「言い方……! 飲み放題、じゃなくて試飲自由、ですからね?」
風呂あがりにビールを頼もうとした和華乃さんを止め、売店のある建物まで戻る。そこの地下にこの施設最大の売りだというワインカーヴがあった。
階段を降りると、細長いトンネルのような空間だった。その壁越しに棚がありそこにぎっしりとワイン瓶が並べられている。通路の中央には2メートル感覚くらいでワイン樽が置かれている。その樽の上には棚に並んでいるのと同じ銘柄の瓶があり、それを自由に試飲できるのだ。
「やっばぁ~、アガってきた!」
「こっちが白で向こうが赤、って感じみたいですね」
通路は2列あり、赤ワインと白ワインで分かれていた。売店の店員さんの話によると、さらに通路の奥にはロゼや貴腐ワイン、さらに普通のワインとは味わいの異なる変わり種もあるらしい。すべて山梨県内のワイナリーで作られているもの、とのことだ。
「じゃあ、さっきレストランで赤飲んだから、まずは白からいってみよう!」
そう言うと和華乃さんは、一番手前の樽に乗っているボトルを手にした。僕も小さなプラコップに、白く輝く液体を注いで口に含む。
「……お?」
2本目の中身を飲み、気づく。3本目、4本目……口のなかに広がる味が……
「へぇ……」
「全然……違うね!」
和華乃さんも口もとを押さえ、目を丸くしていた。正直、ワインの味の違いなんて、自分にはわからないと思っていた。何せバローロをちゃんと味わうこともできなかった二人だ。
「そりゃあ、続けて飲めば違うものだって事くらいはわかると思ってたけど……」
「あるよね!? はっきりと個性みたいなのが!!」
酸味、渋味、香り、後味、さらにはそれらが変化するまで、消えるまでの時間。一本一本すべて異なる。こんなにか? こんなに違いが出るものなのか……?
「あはっ、おもしろーい!」
そこからは二人で次々とボトルに手をつけていった。
「あ、この香り好きかも」
「これ飲みました? たぶん和華乃さん好きだと思いますよ」
「ちょっこれ飲んでみて!? スポドリみたいな味する!」
「樽香ってこれの事ですかね? 鼻に抜ける感じが好きです」
「あーこの渋味は、酢豚に合いそう」
二人してさながら即席のソムリエみたいに、あの手この手で口の中の感覚を表現する。その2本の通路を5周して出た結果……
「ダメだ選べない!!」
おみやげに一番好きだった一本を買おうとしたのに、二人とも全く結論が出せずにいた。
「選択肢が多すぎる……せめて赤と白一本ずつ……」
「だねぇ……。じゃあさ、アタシが赤選ぶから、駿吾は白選んで」
こうしてお互いに選択肢を半分にするも、さらにそこから通路を2往復し……
「決まった?」
「はい、一応……」
入り口近くに、それぞれボトルを持って集合する.
「アタシはこれにした」
和華乃さんは赤黒いボトルを僕に見せる。
「僕はこれです」
僕も白く透き通るボトルを彼女に見せる。
「えっ!?」
そして二人でほぼ同時に声をあげた。僕が悩みに悩んだ結果、一番香りが印象に残った一本。そのラベルに印刷された文字は、和華乃さんが持つボトルと全く同じものだった。
「あはっ!? 嘘でしょ? そんなことってある!?」
二人でそれぞれ選んだのは同じワイナリーの同じ銘柄だった。
「はは……そんな偶然あるんですね」
「いおやこれ偶然じゃないって、アタシと駿吾だからじゃないの?」
貯蔵庫に、二人の笑いが響いた。
「言い方……! 飲み放題、じゃなくて試飲自由、ですからね?」
風呂あがりにビールを頼もうとした和華乃さんを止め、売店のある建物まで戻る。そこの地下にこの施設最大の売りだというワインカーヴがあった。
階段を降りると、細長いトンネルのような空間だった。その壁越しに棚がありそこにぎっしりとワイン瓶が並べられている。通路の中央には2メートル感覚くらいでワイン樽が置かれている。その樽の上には棚に並んでいるのと同じ銘柄の瓶があり、それを自由に試飲できるのだ。
「やっばぁ~、アガってきた!」
「こっちが白で向こうが赤、って感じみたいですね」
通路は2列あり、赤ワインと白ワインで分かれていた。売店の店員さんの話によると、さらに通路の奥にはロゼや貴腐ワイン、さらに普通のワインとは味わいの異なる変わり種もあるらしい。すべて山梨県内のワイナリーで作られているもの、とのことだ。
「じゃあ、さっきレストランで赤飲んだから、まずは白からいってみよう!」
そう言うと和華乃さんは、一番手前の樽に乗っているボトルを手にした。僕も小さなプラコップに、白く輝く液体を注いで口に含む。
「……お?」
2本目の中身を飲み、気づく。3本目、4本目……口のなかに広がる味が……
「へぇ……」
「全然……違うね!」
和華乃さんも口もとを押さえ、目を丸くしていた。正直、ワインの味の違いなんて、自分にはわからないと思っていた。何せバローロをちゃんと味わうこともできなかった二人だ。
「そりゃあ、続けて飲めば違うものだって事くらいはわかると思ってたけど……」
「あるよね!? はっきりと個性みたいなのが!!」
酸味、渋味、香り、後味、さらにはそれらが変化するまで、消えるまでの時間。一本一本すべて異なる。こんなにか? こんなに違いが出るものなのか……?
「あはっ、おもしろーい!」
そこからは二人で次々とボトルに手をつけていった。
「あ、この香り好きかも」
「これ飲みました? たぶん和華乃さん好きだと思いますよ」
「ちょっこれ飲んでみて!? スポドリみたいな味する!」
「樽香ってこれの事ですかね? 鼻に抜ける感じが好きです」
「あーこの渋味は、酢豚に合いそう」
二人してさながら即席のソムリエみたいに、あの手この手で口の中の感覚を表現する。その2本の通路を5周して出た結果……
「ダメだ選べない!!」
おみやげに一番好きだった一本を買おうとしたのに、二人とも全く結論が出せずにいた。
「選択肢が多すぎる……せめて赤と白一本ずつ……」
「だねぇ……。じゃあさ、アタシが赤選ぶから、駿吾は白選んで」
こうしてお互いに選択肢を半分にするも、さらにそこから通路を2往復し……
「決まった?」
「はい、一応……」
入り口近くに、それぞれボトルを持って集合する.
「アタシはこれにした」
和華乃さんは赤黒いボトルを僕に見せる。
「僕はこれです」
僕も白く透き通るボトルを彼女に見せる。
「えっ!?」
そして二人でほぼ同時に声をあげた。僕が悩みに悩んだ結果、一番香りが印象に残った一本。そのラベルに印刷された文字は、和華乃さんが持つボトルと全く同じものだった。
「あはっ!? 嘘でしょ? そんなことってある!?」
二人でそれぞれ選んだのは同じワイナリーの同じ銘柄だった。
「はは……そんな偶然あるんですね」
「いおやこれ偶然じゃないって、アタシと駿吾だからじゃないの?」
貯蔵庫に、二人の笑いが響いた。