会社へ出社すると、大変な騒ぎになっていた。

「社長、週刊誌の記事が掲載されてしまいました」

「熱愛発覚? よくこんなでたらめ書けるなあ、二人で出かけた事はないのに・・・」

しばらくして、兄貴から連絡があった。

「おい、侑斗、どう言うつもりだ、事と次第に寄っては許さないぞ」

兄貴は怒りを露わに、食ってかかってきた。

「落ち着けよ、兄貴、事実無根だよ、二人で会ってないし、熱愛なんかない」

「ちゃんと、つばさちゃんに説明してあるだろうな」

「まだだよ、会社に来てわかった事だからな」

兄貴は慌てた様子で「いま、すぐ、つばさちゃんに説明しろ」と怒鳴った。

「わかったよ」

この時、俺は兄貴の慌てようが理解出来なかった。

だから、仕事が終わってから、マンションへ向かった。

つばさの姿はなかった。

俺はまさか、つばさが週刊誌の記事を鵜呑みにするなんて思いも寄らなかった。

それだけ、つばさの精神的な不安定さを見抜くことが出来なかった。

兄貴は初めから見抜いていた。

だから、すぐに行動しろと俺に忠告していた。