それから程なく、病理検査の結果が出た。

つばさの腫瘍は悪性だった。

放射線治療を施す事になった。

本人にとって辛く苦しい戦いが始まった。

俺は何もしてやる事が出来ず、自分の無力さに自暴自棄になっていた。

ある日、兄貴から呼ばれある提案を相談された。

「侑斗、大変なのはつばさちゃんなんだから、お前が落ち込んでどうする」

「そんな事わかってるよ、でも何も出来ない自分に腹が立って・・・」

「お前にしか出来ない事あるだろう、よく考える事だな」

「俺にしか出来ない事?」

この時はまだよくわからなかった。

「それから、今後の治療方針なんだが、念には念を入れて、子宮全摘出の手術を提案する」

「兄貴の判断に任せるよ」

「即答するな、女性にとって子宮全摘出は大変な判断だ、もう子供は産めない、お前はこの先、目黒コーポレーションの社長として、後継者を残さなければいけない、子供を産めないつばさちゃんとの婚姻関係も続けていけるか、いろいろ考えなければいけないんだぞ」

「なら、目黒コーポレーションは兄貴が継いでくれよ、俺はつばさと別れない」

「俺は無理だ」

「俺も無理、子宮全摘出の件はつばさの命が少しでも永くなるなら、なんでもやるよ」

俺は外科医局を後にした。

つばさに一応話さなければと思っていた、つばさは当然俺の意見に賛成すると思っていたが、意外な言葉がつばさの口から飛び出したのである。