私は彼の担当医師に呼ばれた。

「この十日程が山だと思います、病院に泊まる事も出来ますが、夜はお家に帰って休まれて、いざとなったら病院から連絡する事も出来ますが、如何致しますか?」

「わかりました、一旦帰ります、また準備して来ます」

「了解しました」

私は病室に戻る前にトイレに行った。
鏡の前で口角を上げて、笑顔の練習をして、気合を入れて、病室に向かった。

「凛、先生なんだって?」

「夜は休んだ方がいいから一旦帰宅してくださいって言われた」

「そうだな、今晩急に消えちゃうなんて無さそうだから、凛が倒れると俺心配だから」

「人の心配出来るんだから、当分大丈夫だね」

「ああ、そうだな、凛、ごめんな、一年とか言ってまさか、こんなに早くに迎え来ちゃうなんて、想定外だ」

「大丈夫、迎えに来たら私が追い返すから、それか私、颯と一緒に行こうかな」

「凛」

「やだ、うそうそ、祐くん育てないとね」

彼は私の手を握って「ごめん」と言った。