彼は電話の向こうで呆れた感じで大きなため息をついた。

「凛、お前は俺と食事の約束をしたんだ、店が八時に終わるからその後食事しようって」

頭の中がぐるぐると周りだし、段々と記憶が蘇って来た。
そう、私はスマホを拾って美容室に届けて、あっキスされたんだ、顔が真っ赤になるのを感じた。
電話の相手は、あのめっちゃイケメンのカリスマ美容師。

「おい、聞いてるのか」

「はい、でも今日はお断りします、すみません」

とてもじゃないけど、これから支度して出かけるなんてありえない。
しかももう恥ずかしくて、顔を合わす事なんて出来ないよ。

「何言ってるんだ、俺の誘いを断るのか?」

「もう、放っておいてください、お礼は結構ですから……」

彼は少しの間黙っていた、何か考えていたのだろう。
次の瞬間、とんでもない事を口にした。

「わかった、それなら礼は食事ではなく、俺がこの先凛の専属美容師になってやる、有難いと思え」

「だから、結構です、おやすみなさい」

私はスマホを切った。