「廉、ごめんなさい、私は廉をもう愛していないの、だから、あなたには着いていけない」

私の突然の言葉に廉は動揺を隠せなかった。

「凛、あいつは凛を手放したんだ、目を覚ませ」

「お願い、車を停めて」

廉は車を停めた。
私は車から降りようとドアに手をかけた。
その手を掴み、「凛、行くな」と私を止めた。

「廉、ごめんね、彼の元に行かせて」

廉は大きなため息をついた。
そして車を彼のマンションに向かわせた。

「廉、ありがとう」

「凛、俺は諦めないから」

私は廉に背を向けた。

彼のマンションのオートロックのインターホンを押した。
いくら押しても応答はなかった。
私はなんて事をしてしまったんだろうと、後悔の念に駆られた。

マンションの外に立っていると雨が降って来た。
まるで私の大粒の涙が雨に変わり、辺りの音を消した。
次に気づいたのは初めて見る天井の景色だった。

「やっと気づいたか?」

聞き覚えのある声の方へ視線を移すと、そこには廉の姿があった。

「廉、ここは何処?」