「颯さん、夕飯の支度だけさせてください、もう材料買っちゃったんで」

「わかった、今開ける」

オートロックを開錠し、エントランスのドアを開けた。
エレベーターで上がって来た凛は、部屋までの通路を走って騒がしいヒールの音が俺の部屋の前で止まった。

「颯さん、開けてください」

凛は走って来た為呼吸が乱れていた。
俺はドアを開けた。
そこにはハアハアと息を切らしている凛の姿があった。

「凛、走って来たのか」

「だって、颯さんが心配だったから……」

さっきの俺の決意は無かったかのように、凛の腕を引き寄せて抱きしめた。
バサっと買い物のビニール袋が床に落ちた。

「凛」

俺は堪らず凛にキスをした。
凛は俺のキスを受け入れてくれた。
それでも俺は凛の気持ちに気づけなかった、俺に対しての気持ちは同情ではなく目一杯の愛情だと言う事を……

「颯」

「凛」

「どうしてマンションに入れてくれなかったんですか、私もう嫌われたの?」