「わかった、じゃあ今日はアパートに帰った方がいいな」

「颯さん?」

「しばらく留守にしていたから、掃除したり色々あるだろう」

「はい、それじゃ、そうさせて貰います」

この時彼の気持ちを読み取る事が出来なかった。
私を縛り付けておく事は出来ない、自分のわがままを押し通せないと決意していた事を……

私は久しぶりにアパートへ戻った。
やっぱり住み慣れた場所は落ち着くと気持ちが緩んだ。
早速洗濯したり掃除をしてさっぱりした。
すごく気持ち良かった。

ふっと彼の表情が脳裏を掠めた。
なんであんなに側にいてくれと懇願していたのにアパートに帰った方がいいと言ったのだろうか。
急に彼の事が心配になり、その日の夜彼のマンションへ向かった。

インターホンを押すと「どなたですか」と彼のか細い声が聞こえた。

「凛です」

「どうしたんだ」

「アパートの掃除終わったので、夕飯作ろうと思って、開けてくれますか」

しばらく沈黙が続いた。