「凛を一人で行かせると、あいつに連れて行かれそうで心配だよ」

「颯さん」

そして二人で買い物に出かけた。

俺は正直焦っていた、凛の元彼の存在に……
あいつの目は本気だった。
多分当時役員達の企てで、無理矢理別れさせられたんだろう。
十年前と言ったら、凛は三十歳、今でも魅力的なのに当時は絶対に手放したくないと思っても不思議は無い。

あいつは十年間凛を思い続けていたと言う事か、
それとも偶然出会い、凛の魅力に燻っていた愛が再燃したと言う事か。

凛は十年前に終わった事と言っていたが、愛し合った事実は消えない、今俺に対する気持ちは同情だが、あいつに対しては愛情を感じてもおかしくない。

凛、あいつの所に行くな、俺を好きになってくれと願って俺は毎日凛のことが頭から離れない。

「颯さん、夕飯は何がいいですか?」

「凛が作ってくれるならなんでもいい、任せるよ」

俺は大丈夫と言ったが、具合は相当悪い自覚があった。こんな日がこれから先多くなると思うと、胸が張り裂けそうな気持ちになった。