数センチの距離まで顔が近づき、急な事でドキッとした。

その時私は別の方向へ引き寄せられ、抱きしめられた。
その相手は颯だった。

「颯さん、どうしたんですか」

「ちょっと具合悪くて戻ってきた」

確かに彼の表情は血の気が引いていた。

「大丈夫ですか」

「大丈夫だ、それより……」

そう言って彼は廉を睨みつけた。

「人の女に手を出すとはいい度胸してるな」

廉は大きなため息をついた。

「人の女?凛はあんたを彼氏と認めていないみたいだが……」

私は彼の具合が気になり、二人の間に割って入った。

「颯さん、部屋に戻りましょう?顔色悪いですよ」

「廉、ごめんね」

私は彼とマンションに戻った。

部屋に入ると、彼は薬を飲んだ。
ソファに座り、私に隣に座るように促した。

「あいつは誰?」

「以前お付き合いをしていた人です」

「まだ続いてるのか?」

「まさか、もう別れて十年になりますよ」

彼は納得いかない様子で私を見つめた。