でも取り敢えず今日は、私が颯さんのマンションにいないと、颯さんが入れないんだよね。

買い物行って夕飯の食材買わないと……
私はスーパーに買い物に出かける為マンションを出た。
颯さんは何が好きなんだろうか、そんな事を考えて歩いていると「凛」と私を呼ぶ声が聞こえた。

聞き覚えのある声だった。
振り返ると、以前私が付き合っていた元彼、玉森コーポレーション社長 玉森 廉(たまもり れん)三十八歳だった。
廉と付き合っていたのは、十年前になる。
十年ぶりの再会である。

「廉?」

「凛、相変わらずの美貌だな」

びっくりし過ぎて、私の機能は全停止したように固まった。

「どうしてここに居るの?」

「それはこっちのセリフだよ、このマンションに住んでいるのか?」

「違う、違う」

「今の彼氏がこのマンションの住人か?」

私はどう答えていいのか困って俯いた。

「図星か」

「まだ、彼氏じゃないから……」

慌てて否定すると、廉はふふっと笑い「凛は変わってないな」と私の手を引き寄せた。