待ち合わせしていたのかな?でも私じゃないし。

「あのう、私このスマホの持ち主じゃないんですけど……」

「わかってます、俺が持ち主なんで……」

あっ、持ち主からの電話、ほっと胸を撫で下ろした。

「今何処にいますか?取りに伺います」

「私が届けましょうか?お仕事中ですよね」

平日の昼間、普通の人は仕事中だ。
それに引き換え私はと言うと、派遣で契約切れでニートである。
そう、私は暇なのだ。

「そうですか、じゃお言葉に甘えて、渋谷駅の左の路地を少し入った所のフェニックスと言う美容室です」

「わかりました」

「お名前を伺ってもいいですか」

「涼風 凛です」

「へえ、楽しみだな」

「あのう、名前負けしてるので期待しないでください」

「そうなんだ」

私はスマホを届けに美容室へ向かった。

渋谷駅に到着した。
えっと、左の路地を少し入った所のフェニックスと言う美容室?
あっ、あった。
私はドアを押して店内に入った。

「いらっしゃいませ、ご予約のお客様でしょうか」