彼は私を引き寄せて、じっと見つめた。

「前にも言ったけど、俺は凛と結婚したいんだ、だから、祐の事は話しておかないとって思ったんだ」

そして私を抱きしめた。
私は思わず、彼から離れて後ずさりしていた。

「無理です」

「即答?俺もうふられたの?」

「祐くんは大好きですけど……」

「俺は嫌い?」

私は慌てて否定した。

「そうじゃなくて、大和さんの奥さんは私には務まりません」

「なんで?」

なんでって、そんな事、私が大和さんと釣り合う訳ないし、それに結婚って、まだ付き合ってもいないのに、なんで急に結婚になるかなあ、それに私はもう四十歳で、大和さんといくつ離れていると思ってるの?言葉に出来ない気持ちを心の中で彼にぶつけた。

「凛、俺の奥さんになるってそんなに難しくないだろ?」

私はぽかんとして、固まった。私にとっては最高の難易度なんですけど……

「私にとっては凄く難しいです」

彼は理解不能の表情を見せた。

「俺の事好きになってくれればいいんだけど……」