「あのう、今日はお店はお休みですか」

私は案内された席に座りながら尋ねた。

「そうだよ、凛と二人の時間を過ごしたかったから」

彼は鏡越しに熱い視線を私に向けた。
固まったまま身動き出来ず、私はじっと彼を見つめた。

「そんなに見つめられると照れるな」

彼はそう言いながら私の髪を撫でた。
ぞくっと身体が反応し、息していない事に気づき苦しくなった。
深呼吸して彼から視線を反らした。

彼は真剣な眼差しでカットを始めた。
すごい、ハサミの動きが流れるように髪をカットして行く。

「どうかな、これ位毛先に動きがあった方が凛には似合うと思うよ」

鏡に映った私はまるで別人だった。

「流すからシャンプー台に移ってくれる?」

「あっ、は、はい」

シャンプー台に座り、背もたれが倒されて、彼が私の顔を覗き込んだ。

「シャンプーしていくね」

「あの、顔にカーゼ掛けないんですか?」

「カーゼかけたら、凛の可愛い顔が見えないだろう」

えっ?このまま彼と至近距離でシャンプーするの?