駐車場には、何台もの警察車両が止まっていた。

その警察車両は、駐車場の白線を無視して、レストランを囲むように並んでいる。

ほんの僅かに流れるそよ風に、薄霧の水の粒が揺らめく。

私は、警察官に連行される。

警察車両の周りには大勢の警察官が居る。

その中に、見覚えのある人達が居た。

それは、老婆が、霧の中に悪魔がいると叫んだ、あの時、早々にレストランを出た若いカップルだった。

そのカップルは、私を見ている。

その表情は、悲しさと恐れが混ざっている。

私もカップルを見た。

カップルは、すかさず目を逸らす。

私は駐車場の崖側に止まっていた救急車に誘導される。

その時、崖の下に広がる町並みが見えた。

所々、雲のように霧が町並みを隠している。

しかし、霧の無い場所は、はっきりと見える。

悪魔が地ならしした様子は無い。

道路を行き交う車は忙しなく、人々は変わらない朝を迎えていた。

何の気持ちも変わらないのに、自然と、目に涙が滲む。

私は、誘われるまま、救急車に乗った。

軽快な鳩の鳴き声が聞こえる。

その鳴き声は軽快だった。

朝を迎えて、一日が始まる事を喜んでいるように聞こえる。

その鳩の鳴き声をぼうっと聞いていると、それを遮るように、救急隊員は、救急車のドアを閉めた。