「悪魔さん、早く、私を殺してください」

私は言った。

力一杯に言い放ったはずが、よろよろと、か細い。

「警察です」

その男性は言う。

「悪魔さん、もう正直に言ってください。早く妻と娘のもとへ行かなくちゃいけないんです」

「警察ですよ、もう安心してください」

「警察?」

「そうです、警察です。気を確かに」

警察官がここに居る?

助けに来た?

私は助かる?

「一名、生存者確認。衰弱している。今すぐ救護を」

警察官は、無線で話す。

間もなくして、複数人の警察官が店内に入ってきた。

その後に続いて、救急隊員が来た。

救急隊員は、私を半ば強制にタンカーへ乗せた。

私は、すかさず暴れて、タンカーから、落ちた。

床に尻餅をついたまま、集まった救急隊員や警察官を見上げる。

「私、助かる?」

私は言った。

「はい、もう大丈夫ですよ」

この先も生きてしまう絶望感が押し寄せる。

「だめだよ! 殺してくれ。妻と娘が待ってるんだ」

私は、救急隊員に願う。

しかし、救急隊員は、私を救う為に、なだめようとする。

私は、乱暴に救急隊員の手を振り払う。

「あー!」

その絶望感が、体の中でぐつぐつと煮えたぎり、口から溢れ出るように、叫ぶ。

生きたいなんて頼んでいない。

死にたいんだ。

しかし、私を助けようとしてくれる。

ここが地獄か。