何もなければ、私の存在を証明する事は出来なかった。
とても静かだ。
ふと、何もない静寂に、物足りなさを感じた。
視界は白を映すだけで何もない。
私は耳で周囲を確認する。
霧が、私の体をじとっと湿らせて重い。
霧は、何の音も発してはくれない。
何もない環境では、死を奮起させる。
死ぬ為に、ここで悪魔を待っている。
しかし、耳の奥へ奥へ侵攻する無音の軍勢がが、死の恐怖を煽り立てる。
その無音の軍勢に、脳の守衛は反撃する。
死が怖いのは何故か!
痛いからか!
苦しいからか!
もう楽しい事を経験出来ないからか!
そうなら、お前は何故知っている。
死んだ者しか味わえない、この死を生きているお前は何故知っている。
死がどういうものかわからない以上、死が怖いものかもわからないではないか。
怯んだ無音は、耳の中で、ありもしない音を作り始めた。
その音は高音、中音、低音が混ざっている。
娘の透き通った繊細な高い声。
老父や篠生が争うような中音の声。
老婆の説得力と預言の信憑性を高める低音の声。
お互いが別々の主張をして不協和音になっている。
その一つ一つが聴こえる度に、視界に広がる霧に映像が流れる。
映像は断片的な光景を走馬灯のように現れては消える。
時折、妻と娘の光景が映ると、仄かにほっこりした。
段々と、妻と娘の光景を求めるようになり、まだかまだかと、娘の声を待ち望む。
次第に、私の中で、優劣がつき、娘の声以外に不満を感じるようになる。
とても静かだ。
ふと、何もない静寂に、物足りなさを感じた。
視界は白を映すだけで何もない。
私は耳で周囲を確認する。
霧が、私の体をじとっと湿らせて重い。
霧は、何の音も発してはくれない。
何もない環境では、死を奮起させる。
死ぬ為に、ここで悪魔を待っている。
しかし、耳の奥へ奥へ侵攻する無音の軍勢がが、死の恐怖を煽り立てる。
その無音の軍勢に、脳の守衛は反撃する。
死が怖いのは何故か!
痛いからか!
苦しいからか!
もう楽しい事を経験出来ないからか!
そうなら、お前は何故知っている。
死んだ者しか味わえない、この死を生きているお前は何故知っている。
死がどういうものかわからない以上、死が怖いものかもわからないではないか。
怯んだ無音は、耳の中で、ありもしない音を作り始めた。
その音は高音、中音、低音が混ざっている。
娘の透き通った繊細な高い声。
老父や篠生が争うような中音の声。
老婆の説得力と預言の信憑性を高める低音の声。
お互いが別々の主張をして不協和音になっている。
その一つ一つが聴こえる度に、視界に広がる霧に映像が流れる。
映像は断片的な光景を走馬灯のように現れては消える。
時折、妻と娘の光景が映ると、仄かにほっこりした。
段々と、妻と娘の光景を求めるようになり、まだかまだかと、娘の声を待ち望む。
次第に、私の中で、優劣がつき、娘の声以外に不満を感じるようになる。