娘は、虚ろな目で、私を見る。

私の両手が妻の首元にある。

私は、慌てて、娘に駆け寄る。

意識もまばらの娘を床にそっと寝かせた。

私は、乱れた娘の細く柔らかい髪を手ぐしで整える。

そして、娘の首に両手を置いた。

妻の首よりも華奢で、柔らかくて吸い付くような肌質。

「すまない、こうするしかないんだ」

私の手が震えている。

きっと、今、私は、悪魔のような鋭い目をしているのだろう。

指圧を強める。

娘は眉間にしわを寄せて、苦しみに顔を歪ませる。

きゅうっと、娘の口から、細い息が漏れる。

「妻があの世で探しているよ」

娘の体が小刻みに痙攣をする。

間もなくして、がくっと首を垂れる。

再び目覚めて、独りぼっちにならないように意識が無くても、娘の首を絞め続けた。

そして、娘の息が止まっている事を確認し、絞首を止めた。

私は、ぽっかりと空いた虚無感に、呆然とする。

これで、私も、妻と娘のもとへ行ける。

ふと、気が付いた。

独りでは、誰に殺して貰う事ができない。

自殺するしかなかった。

突然、脳裏に、郷珠の焼身した最後が浮かんだ。

そして、自殺に対して、ざわざわと恐怖心が押し寄せてきた。

私に自殺なんて、出来るはずがない。

自殺なんて、考えた事も無かった。

でも、妻と娘が待っている。