もうこのまま死を選ぶしか無いのだろうか。

「私達は、決断する時が来た」

老婆は突然、口を開いた。

老婆は、私達に話を続ける。

私達は、最後の望みをかけて、老婆の言葉に耳を傾けた。

「悪魔はもう目前にまで来ているだろう。悪魔に許しを乞い」

老婆は言う。

「どうやって、許しを乞うんだ?」

私は言う。

「一人を選び、生贄にする」

「ここまできて、生贄を差し出したところで、悪魔に受け入れられるのか?」

「そうだ。悪魔に命を献上する事で友好的であると示すのだ」

私は言葉を詰まらせる。

もう、私達には、成す術は無く、極度の疲労から、考える事も出来なくなっていた。

もちろん、老婆の案は、誰かが悪魔に殺される事になるのは理解出来た。

私は、自然と、郷珠を見る。

郷珠は、私の視線に気が付かない。

「誰が、その生贄になるのです?」

私は訊ねる。

「お前は、配達員を解放した結果、人を殺した。お前の奥さんは、あの者を惑わして死に追いやった」

老婆は死んでいる篠生を見て言う。

「私達が生贄になれというのですか?」