午前四時を過ぎた。

もう間もなく、夜明けが訪れる。

絶望の夜明けだ。

太陽が昇ったところで、私達は皆、何もする事はできない。

いつ来るかわからない悪魔に怯えて、いつ助けにくるかわからないアーを信じて。

老婆は、アーに願い続けている。

本当に居るのかもわからないアーに、真剣に願っている。

私は周囲を見る。

妻は、私の肩に頭を預けている。

薄っすらと開いている目は一点を見ている。

その妻の隣に亡き娘が横になっている。

郷珠は、水の止まった噴水の近くの席に座っている。

老婆は、ずっと自らの席から離れない。

錆びた鉄の臭いが漂い、死体がごろごろと床に横たわっている。

こんな状況になっても、アーは助けてはくれない。

私達は見捨てられたのではないか。

そんな思考が頭によぎる。

しかし、アーが来るのを待つ他に、今出来る事は無かった。

どちらにしても助からないのであれば、最後に何か、妻に出来る事は無いか。

外に出られない。

いつ命を奪われるかわからない。

この状況では、お金が有っても何も意味を成さない。

仕事で役職に就いても、同僚に親しまれても、命を守る事の出来ない、無意味な恍惚境だ。

妻と娘と三人で行った旅行の数々の思い出は信頼を再確認出来るが、助かる術を見出す事は出来ない。