画面が切り替わる。

廊下を歩く男性。

ランタンの明かりが漏れる牢屋に着いた。

その牢屋には、誰も居なかった。

ぐるる。

犬の威嚇する声が聞こえて、男性は左を見る。

そこには、大型犬が居た。

私は全力で廊下を走って逃げる。

あと少しでシャッターの所で、足を滑らせて転倒した。

その男性に犬は飛びかかり、男性の首に噛み付く。

それを見て、皆は大笑いしている。

「いやー!」

突然、田堂の母が叫んだ。

叫び声は悲鳴にも似ている。

田堂の母へ目線を向けた時、私の全身をふわっとした空気に包まれる。

その瞬間、視界はまた違った光景を映した。

眠っていたようだ。

私は上体を起こし、周囲を見た。

元の店内に戻っている。

「ねぇ、どうしたの? ねぇ!」

田堂の母が、息子の体を揺すっている。

息子は目が突出して、呼吸をしようにも何か詰まっていて出来ない。

顔は赤く、唇は青白い。

「早く、テープを剥がしてください!」

篠生は、田堂の母に言う。

「ならぬ! 声を上げれば、悪魔が集まる」

老婆は阻止しようとする。

田堂の母は混乱して呼吸が荒い。

「ぼ、僕だって。僕だって、医者なんだ!」

篠生はそう言って、田堂の息子へ駆け寄る。

篠生は田堂の息子の口を塞ぐテープを取った。

田堂の息子は、舌は垂れ下がり、よだれが流れる。

喉を詰まらせて、呼吸の循環が出来ていない。

「横に寝かせます」

篠生は言う。

「そう言って、あたしの息子を殺そうとしているのね! あたしの息子には一本も触れさせないわ」

田堂の母は篠生の前に立ちはだかる。

見る見るうちに、田堂の息子の状態が悪化していく。

遂には、田堂の息子の全身が、大きく痙攣を起こし始めた。

痙攣により、車椅子が大きく揺れ動く。

その揺れに車椅子の車輪が耐えている。

次の瞬間、田堂の息子の痙攣が、ぴたっと、止まった。

先程までの激しい動きが止まり、静けさが広がる。

静けさの中で、私の不穏な心音が体を揺らす。