無責任な幽霊の噂は、雨の日が減っていくにつれて消えつつあった。

永瀬先輩が事故で亡くなった時は、三年生やサッカー部だけでなく、私たち下級生にも衝撃が走り、泣き出す人もいた。
私も初めて話を聞いた時は受け止める事ができず、毎日美術室からグラウンドを見下ろして、永瀬先輩の姿を探した。
だけど、見つける事はできなかった。

彼女になりたいとか、自分の存在を知ってもらいたいとか、そんな願いは無かったけれど、亡くなってしまったら何の意味もなかった。
元気に笑っている姿を見ていられるだけでいいって、そう思っていたのに。
こんな事になるくらいなら、自分の気持ちを伝えるべきだったとすごく後悔した。

もしかしたらその私の後悔が、先輩に届いたのかもしれない。
あの日、バス停で永瀬先輩と言葉を交わせた事は、奇跡だったと思う。