「……お前のせいで装備も食料も全部なくなったから、調達しないとまずいんだよ」
俺の現在の所持品を、ここに列挙すると。
①焼け焦げた服。
②木の棒。
③石ころ。
……以上だ。
武器も食料もない。荷物袋もフィーコとの戦闘時に捨ててきた。
“着の身着のまま”という言葉があるが、今の俺はそれ以下の状態だ。
『そんなにやばいの?』
「ああ、やばい。どれぐらいやばいかって言うと……とてもやばいです」
『テオが敬語に……』
前世でSランク冒険者だったからサバイバルは得意だが、べつにサバイバルしたいわけではない。サバイバル技術はあくまで緊急用だ。
ただでなくても、生き残るためだけに労力を割いている余裕はないというのに、常時サバイバル環境にいたら体力も精神も時間も削られて、いざというとき戦うどころではなくなってしまう。
「……この状況で強い魔物と出くわしたら、さすがに厳しいな」
『でも、武器がないなら魔法で戦えばいいじゃない』
「それ、“パンがないならケーキを食べればいいじゃない”って言ってるのと同じだからな」
『なんで?』
「さすがに、攻撃魔法だけで戦うのは燃費が悪すぎるだろ」
パーティーを組んでるならともかく、ソロで魔力切れしたら致命的だ。
魔物1体に全力を出し切るような贅沢な魔力の使い方はできない。
あくまで燃費のいい強化魔法を使った肉弾戦をメインにしたい。
それに、俺の戦闘スタイルは――“魔法剣士”だ。
魔法と剣術を織り交ぜる近接戦闘が、やはり一番戦いやすい。
そこまでは、敵でもあるフィーコに教えてはやる義理はないが。
『ふふ、攻撃魔法も満足に使えないなんて……人間は軟弱ね』
「その軟弱な人間に負けた不死鳥さん、ちーっす」
『う、うぬぅぅうう……ッ!』
誇り高き不死鳥、煽り耐性が低かった。
まぁ、フィーコの煽られ事情なんてどうでもいい。
「ともかく、これからすべきなのは物資の調達だというわけだ。ただ、問題は……情報だな。なにをするにしても情報がなさすぎる。どこに村や町があるかも、どこにどんな魔物がいるかもわからないのは、さすがにな……」
魔物が大勢いるうえに武装している一方、俺は1人きりで丸腰だ。
レベル58なら武器なしでも充分に戦えるだろうけど……。
相手のレベルや天恵を知らずに無策で立ち向かえば、レベルが下の相手でも遅れを取りかねない。
『ふふん……情報欲しい? 欲しいわよね? 教えてあげてもいいわよ?』
と、フィーコがいきなり上から目線で言ってくる。
「……対価はなんだ? その様子じゃ、ただで協力するつもりはないんだろ?」
『ふふ、わかってるじゃない』
フィーコが、ぺろりと舌なめずりをする。
『ま、たいしたものはもらわないわ。ただ、少し……あなたの体に憑依させてもらうだけよ?』
「……俺の体を使って、なにをするつもりだ?」
『お魚食べる』
「なるほど」
嘘をついている様子はない。
というか、こいつがバレない嘘をつけるほど器用じゃないことは、だいたい察しがついている。
そもそも人間みたいな無駄に社会性のある種族じゃないなら、嘘をつく機会なんてそうそうないだろうしな。
「まぁ、いいぞ。それぐらいなら」
『やった!』
というわけで憑依させてやると、俺の体が勝手に動いて魚に食らいついた。
2人で1つの体を動かしている感覚だ。なんとも気持ち悪い。
『んまぁぁ……ッ!』
「いや、生焼け魚を食べるのが野蛮説はどこにいった」
『ふふん、あなたの体で食べてるんだから野蛮なのはあなただけよ?』
「…………」
『……なによ、その沈黙は?』
「お前、友達いないだろ」
『は、はぁ!? そ、そそそ、そのことは今、関係ないでしょう!? というか、根拠は!? 根拠はあるの!?』
「そのリアクションがもう根拠みたいなものだろ」
誇り高き不死鳥、友達がいなかった。
そんな意味のない情報を、なんの意味もなく手に入れたところで。
「というか、おい。これ以上食べる前に、とっとと情報よこせ」
魚の串から、自分の体を引き剥がす。
フィーコも対抗して、ぐぐぐ……と魚を口に近づけようとする。
他人が見たら、一人芝居しているようにしか見えないだろう。
『ちょっと! このフィフィ様がまだ食べてる途中でしょう!?』
「この続きは有料だ」
『べ、べつにいいじゃない! あなたのお腹も膨れるんだし!』
「どうせお前、満足したら約束破るつもりだろ」
『ぎくぅぅッ!? そ、そそそ、そんなことはななななッ!』
「そうかそうか。俺の体から出てけ」
フィーコを体から叩き出す。
説明しにくいけど、なんかやってみたらできた。
おそらく他の霊系の魔物と同じように、精神的に抵抗していれば憑依はされないといったところか。
『むぅ……仕方ないわね』
フィーコがしぶしぶというように、指先から出した炎を操って、空中に簡略化された地図を描く。これぐらいの魔法なら今でも使えるらしい。
『それで、欲しいのはこの辺りの地理情報だったかしら?』
「ああ。とりあえず知りたいのは、武器や食料を補給できそうな場所だな」
『うーん、そうね……この近くで補給できそうな場所は2つあるわ。1つは、“養殖場”。あなたがいた町みたいな魔物に支配された町のことね。もう1つは――“人狼の城”よ』
「人狼の城?」
『魔物の補給拠点として使われている城砦ね。管理してるのは、その名の通り――レベル46の人狼よ。近くに畑も多いし、金属加工に優れたコボルトたちをつれているから、食料も武器も浴びるほど手に入るんじゃないかしら?』
「なるほど。人狼にコボルトか……」
前世でもよく見た、種族の組み合わせだ。
人狼がコボルトを配下にするのは珍しくない。
コボルトも二足歩行の犬だから生態が似ている、という理由も大きいんだろうが、それとは別にコボルトの【金属探知】という天恵も大きな理由の1つだろう。
とくにコボルトは、人狼が苦手とする銀を探し出すのを得意とする。
そういう意味でも、相性がいいのだ。
『ただ、もちろんリスクも高いわ。人狼の城を襲撃するってことは、もちろん……』
「俺の居場所を魔物に教えるようなもの、か」
『ええ。しかも魔物を刺激するわけだから、魔物もあなたをさらに血眼になって探すようになるでしょうね。それに……人狼の城は、“王”がいる魔界に近いわ』
「……魔界」
――魔大陸。
――魔物の領域。
――魔物たちの王国。
前世の時代から呼ばれ方はさまざまあったが、ひとつ確かに言えることは……そこが、強力な魔物たちの跋扈する地であるということだ。
魔界は人間が住める地ではない。地脈からわき上がる濃密な魔力で覆われており、レベルが低い人間ならば魔界の空気を少し吸っただけで魔力中毒になってしまう。
そんな地にいる魔物たちは、もちろん全てが強力だ。
知性を持たない野良の魔物ですら――強い。
『さすがに、今のあなたのレベルで魔界に近づくのは、“食べてください”って言いにいくようなものよ。もちろん、高レベルの魔物とぶつかるのも早くなるでしょうね』
「だろうな」
『で……どちらを選ぶのかしら? 安全策を取るなら“養殖場”、リスクを取るなら“人狼の城”だけど……』
「決まってるだろ? 人狼の城だ」
『……へぇ、どうして?』
「だって、そっちに進んだほうが高レベルの魔物と戦えるんだろ? 最高じゃないか。手っ取り早くレベルアップすることができる」
俺がゆっくりじっくりレベルアップするのを、魔物たちが待ってくれるはずもない。
どうせ、魔物を殺してレベル上げをしていれば、追っ手に見つかるのは時間の問題だろう。
だからこそ重要なのは、フィーコレベルの魔物とぶつかる前に、どれだけレベルを上げられるかだ。
「たとえ無謀だとしても……今の俺には上手に生きている暇なんてない。急がば突撃、回り道なんてクソ食らえだ。俺の前に立ちふさがるものは、喰って、喰って――喰らい尽くす。そして一直線に、魔界にいる“王”の喉元まで喰らいついてやる」
『ふぅ……まったく、人間はやっぱり野蛮で愚かね』
フィーコはやれやれとばかりに肩をすくめてみせてから。
『――そうこなくっちゃ!』
にやりと不敵に笑った。
「で、人狼は1体か?」
『そうね。まあ、爵位持ちは基本的に群れないわ』
「爵位持ち?」
『レベルに応じた魔物の階級みたいなものよ。たとえば、レベル77のわたしは公爵だし、人狼はレベル46だから子爵ね。爵位持ちの魔物はだいたい地方や拠点のリーダーみたいな立場にあるから、指揮系統を混乱させないためにも同じ場所に何体も配置したりはしていないわ』
「へぇ」
自分勝手な魔物どもが、種族をまたいだ階級制度を作っているというのは、なんとも驚きだ。
「人狼の天恵はわかるか?」
『たしか、【月光合成】っていう天恵ね。月の光を魔力に変換して、肉体を強化したり再生したりする力って聞くわ』
「……天恵の名前まえで情報が共有されてるのか」
『べつに魔物のみんなが知ってるわけじゃないわ。魔界での身分が高いわたしだから知ってるトップシークレットな情報よ。せいぜい感謝しなさい』
「ま、助かるのは事実だ」
フィーコが嘘をつく可能性もあるが、少なくとも人狼の天恵については俺の経験とも合致している。
人狼なら何体か倒したことがあるからな。
とはいえ、本来はその種族しか知らないはずの天恵の名前や詳細まではさすがに知らなかった。
この辺りの情報を得られるのは、かなり大きい。
なにはともあれ、レベル46の人狼程度が相手なら問題はないだろう。
「それじゃあ、次の目的地は――人狼の城だな」
城を襲撃して、レベルアップ&物資調達をさせてもらうとしよう。
俺の現在の所持品を、ここに列挙すると。
①焼け焦げた服。
②木の棒。
③石ころ。
……以上だ。
武器も食料もない。荷物袋もフィーコとの戦闘時に捨ててきた。
“着の身着のまま”という言葉があるが、今の俺はそれ以下の状態だ。
『そんなにやばいの?』
「ああ、やばい。どれぐらいやばいかって言うと……とてもやばいです」
『テオが敬語に……』
前世でSランク冒険者だったからサバイバルは得意だが、べつにサバイバルしたいわけではない。サバイバル技術はあくまで緊急用だ。
ただでなくても、生き残るためだけに労力を割いている余裕はないというのに、常時サバイバル環境にいたら体力も精神も時間も削られて、いざというとき戦うどころではなくなってしまう。
「……この状況で強い魔物と出くわしたら、さすがに厳しいな」
『でも、武器がないなら魔法で戦えばいいじゃない』
「それ、“パンがないならケーキを食べればいいじゃない”って言ってるのと同じだからな」
『なんで?』
「さすがに、攻撃魔法だけで戦うのは燃費が悪すぎるだろ」
パーティーを組んでるならともかく、ソロで魔力切れしたら致命的だ。
魔物1体に全力を出し切るような贅沢な魔力の使い方はできない。
あくまで燃費のいい強化魔法を使った肉弾戦をメインにしたい。
それに、俺の戦闘スタイルは――“魔法剣士”だ。
魔法と剣術を織り交ぜる近接戦闘が、やはり一番戦いやすい。
そこまでは、敵でもあるフィーコに教えてはやる義理はないが。
『ふふ、攻撃魔法も満足に使えないなんて……人間は軟弱ね』
「その軟弱な人間に負けた不死鳥さん、ちーっす」
『う、うぬぅぅうう……ッ!』
誇り高き不死鳥、煽り耐性が低かった。
まぁ、フィーコの煽られ事情なんてどうでもいい。
「ともかく、これからすべきなのは物資の調達だというわけだ。ただ、問題は……情報だな。なにをするにしても情報がなさすぎる。どこに村や町があるかも、どこにどんな魔物がいるかもわからないのは、さすがにな……」
魔物が大勢いるうえに武装している一方、俺は1人きりで丸腰だ。
レベル58なら武器なしでも充分に戦えるだろうけど……。
相手のレベルや天恵を知らずに無策で立ち向かえば、レベルが下の相手でも遅れを取りかねない。
『ふふん……情報欲しい? 欲しいわよね? 教えてあげてもいいわよ?』
と、フィーコがいきなり上から目線で言ってくる。
「……対価はなんだ? その様子じゃ、ただで協力するつもりはないんだろ?」
『ふふ、わかってるじゃない』
フィーコが、ぺろりと舌なめずりをする。
『ま、たいしたものはもらわないわ。ただ、少し……あなたの体に憑依させてもらうだけよ?』
「……俺の体を使って、なにをするつもりだ?」
『お魚食べる』
「なるほど」
嘘をついている様子はない。
というか、こいつがバレない嘘をつけるほど器用じゃないことは、だいたい察しがついている。
そもそも人間みたいな無駄に社会性のある種族じゃないなら、嘘をつく機会なんてそうそうないだろうしな。
「まぁ、いいぞ。それぐらいなら」
『やった!』
というわけで憑依させてやると、俺の体が勝手に動いて魚に食らいついた。
2人で1つの体を動かしている感覚だ。なんとも気持ち悪い。
『んまぁぁ……ッ!』
「いや、生焼け魚を食べるのが野蛮説はどこにいった」
『ふふん、あなたの体で食べてるんだから野蛮なのはあなただけよ?』
「…………」
『……なによ、その沈黙は?』
「お前、友達いないだろ」
『は、はぁ!? そ、そそそ、そのことは今、関係ないでしょう!? というか、根拠は!? 根拠はあるの!?』
「そのリアクションがもう根拠みたいなものだろ」
誇り高き不死鳥、友達がいなかった。
そんな意味のない情報を、なんの意味もなく手に入れたところで。
「というか、おい。これ以上食べる前に、とっとと情報よこせ」
魚の串から、自分の体を引き剥がす。
フィーコも対抗して、ぐぐぐ……と魚を口に近づけようとする。
他人が見たら、一人芝居しているようにしか見えないだろう。
『ちょっと! このフィフィ様がまだ食べてる途中でしょう!?』
「この続きは有料だ」
『べ、べつにいいじゃない! あなたのお腹も膨れるんだし!』
「どうせお前、満足したら約束破るつもりだろ」
『ぎくぅぅッ!? そ、そそそ、そんなことはななななッ!』
「そうかそうか。俺の体から出てけ」
フィーコを体から叩き出す。
説明しにくいけど、なんかやってみたらできた。
おそらく他の霊系の魔物と同じように、精神的に抵抗していれば憑依はされないといったところか。
『むぅ……仕方ないわね』
フィーコがしぶしぶというように、指先から出した炎を操って、空中に簡略化された地図を描く。これぐらいの魔法なら今でも使えるらしい。
『それで、欲しいのはこの辺りの地理情報だったかしら?』
「ああ。とりあえず知りたいのは、武器や食料を補給できそうな場所だな」
『うーん、そうね……この近くで補給できそうな場所は2つあるわ。1つは、“養殖場”。あなたがいた町みたいな魔物に支配された町のことね。もう1つは――“人狼の城”よ』
「人狼の城?」
『魔物の補給拠点として使われている城砦ね。管理してるのは、その名の通り――レベル46の人狼よ。近くに畑も多いし、金属加工に優れたコボルトたちをつれているから、食料も武器も浴びるほど手に入るんじゃないかしら?』
「なるほど。人狼にコボルトか……」
前世でもよく見た、種族の組み合わせだ。
人狼がコボルトを配下にするのは珍しくない。
コボルトも二足歩行の犬だから生態が似ている、という理由も大きいんだろうが、それとは別にコボルトの【金属探知】という天恵も大きな理由の1つだろう。
とくにコボルトは、人狼が苦手とする銀を探し出すのを得意とする。
そういう意味でも、相性がいいのだ。
『ただ、もちろんリスクも高いわ。人狼の城を襲撃するってことは、もちろん……』
「俺の居場所を魔物に教えるようなもの、か」
『ええ。しかも魔物を刺激するわけだから、魔物もあなたをさらに血眼になって探すようになるでしょうね。それに……人狼の城は、“王”がいる魔界に近いわ』
「……魔界」
――魔大陸。
――魔物の領域。
――魔物たちの王国。
前世の時代から呼ばれ方はさまざまあったが、ひとつ確かに言えることは……そこが、強力な魔物たちの跋扈する地であるということだ。
魔界は人間が住める地ではない。地脈からわき上がる濃密な魔力で覆われており、レベルが低い人間ならば魔界の空気を少し吸っただけで魔力中毒になってしまう。
そんな地にいる魔物たちは、もちろん全てが強力だ。
知性を持たない野良の魔物ですら――強い。
『さすがに、今のあなたのレベルで魔界に近づくのは、“食べてください”って言いにいくようなものよ。もちろん、高レベルの魔物とぶつかるのも早くなるでしょうね』
「だろうな」
『で……どちらを選ぶのかしら? 安全策を取るなら“養殖場”、リスクを取るなら“人狼の城”だけど……』
「決まってるだろ? 人狼の城だ」
『……へぇ、どうして?』
「だって、そっちに進んだほうが高レベルの魔物と戦えるんだろ? 最高じゃないか。手っ取り早くレベルアップすることができる」
俺がゆっくりじっくりレベルアップするのを、魔物たちが待ってくれるはずもない。
どうせ、魔物を殺してレベル上げをしていれば、追っ手に見つかるのは時間の問題だろう。
だからこそ重要なのは、フィーコレベルの魔物とぶつかる前に、どれだけレベルを上げられるかだ。
「たとえ無謀だとしても……今の俺には上手に生きている暇なんてない。急がば突撃、回り道なんてクソ食らえだ。俺の前に立ちふさがるものは、喰って、喰って――喰らい尽くす。そして一直線に、魔界にいる“王”の喉元まで喰らいついてやる」
『ふぅ……まったく、人間はやっぱり野蛮で愚かね』
フィーコはやれやれとばかりに肩をすくめてみせてから。
『――そうこなくっちゃ!』
にやりと不敵に笑った。
「で、人狼は1体か?」
『そうね。まあ、爵位持ちは基本的に群れないわ』
「爵位持ち?」
『レベルに応じた魔物の階級みたいなものよ。たとえば、レベル77のわたしは公爵だし、人狼はレベル46だから子爵ね。爵位持ちの魔物はだいたい地方や拠点のリーダーみたいな立場にあるから、指揮系統を混乱させないためにも同じ場所に何体も配置したりはしていないわ』
「へぇ」
自分勝手な魔物どもが、種族をまたいだ階級制度を作っているというのは、なんとも驚きだ。
「人狼の天恵はわかるか?」
『たしか、【月光合成】っていう天恵ね。月の光を魔力に変換して、肉体を強化したり再生したりする力って聞くわ』
「……天恵の名前まえで情報が共有されてるのか」
『べつに魔物のみんなが知ってるわけじゃないわ。魔界での身分が高いわたしだから知ってるトップシークレットな情報よ。せいぜい感謝しなさい』
「ま、助かるのは事実だ」
フィーコが嘘をつく可能性もあるが、少なくとも人狼の天恵については俺の経験とも合致している。
人狼なら何体か倒したことがあるからな。
とはいえ、本来はその種族しか知らないはずの天恵の名前や詳細まではさすがに知らなかった。
この辺りの情報を得られるのは、かなり大きい。
なにはともあれ、レベル46の人狼程度が相手なら問題はないだろう。
「それじゃあ、次の目的地は――人狼の城だな」
城を襲撃して、レベルアップ&物資調達をさせてもらうとしよう。