「えっ、ホントですか!? 嬉しいな!」

「真樹のファン、こんなとこにもいたんだ。岡原もそうなんですよ、先生」

 美雪が(よこ)(やり)を入れてきた。山村先生が目を瞠る。

「岡原くんって、一組にいた岡原くん? あら、意外ねえ」

「先生……。あたしも最初にそれ聞いた時、そう思ったんで気持ち分かります」

 恩師のコメントがあまりにも(しん)(らつ)だったので、真樹は苦笑いした。

 ちなみに山村先生は真樹の中学時代、彼女の恋を応援してくれて、何度か協力してもくれたことがあるのだ。

「そういえば今日、岡原くんも来てるわね。麻木さん、もう彼と話した?」

「はい、さっき少しだけ。――なんか、逞しくなっててビックリしました。中学の頃は細かったから」

「でしょうね。五年も経てば、あなた達くらいの年代の子達の変化は(いちじる)しいでしょう。わたしの歳になるともう、ただ()ける一方よ」

 自虐混じりに肩をすくめる元担任に、美雪が鋭いツッコミを入れた。

「先生って今年、三十六歳でしたよね?」

「美雪っ!」

 真樹が小声で親友をたしなめる。「まだ若い」と言いたかったのだろうけれど、女性に対して年齢の話は()法度(はっと)である。

「あ……。先生、ゴメンなさい」

「山村先生! 先生は全然変わってないですよ! 今も十分(じゅうぶん)若々しいです!」

 美雪が小さく謝るのにおっ(かぶ)せて、真樹は慌ててフォローした。

「あらぁ、そう? ありがとう」

 真樹のフォローがよかったからなのか、それとも美雪の一言が聞こえなかったからなのか、山村先生は上機嫌だった。

(接客業やってると、こういう時便利だな)

 真樹はこっそり思った。どういう業種であれ、客の機嫌を損ねることだけは絶対にしてはいけないのだ。

「――ねえ先生、みんなクラスごとに集まってるんですか?」

「ええ、一応。一旦各クラスごとに出欠の確認取ってもらって、一人ずつ近況報告とかしてもらったら、あとは自由に固まってくれて構わないから」