今夜の一件で、わたしは店長のことを男の人として意識し始めている。
今までの私は、出会った瞬間に見た目で人を好きになることが多くて。これまで全く意識していなかった人への気持ちが、180度以上もひっくり返ってしまったのは初めてだった。見た目ではなく、内面に感情が揺すぶられることも。
「帰ろうか」
佐川店長の些細な言葉が、仕草が、今まででは考えられないくらいにわたしをドキドキさせる。
店長が彼氏のフリではなく、本当の彼氏になってくれる可能性はどれくらいあるだろう。
別れる際ぎりぎりまでわたしのことを気遣ってくれていた佐川店長の隣で、わたしはずっとそんなことばかり考えていた。