そして、同封されていたメモを手に取った。
 シド兄の臨終の前日、一時的に意識を取り戻したとき、書いたもの。
 
  「このよのはてで」

 解読するのが難しいほど乱れた文字でそう書かれていた。
 
 わたしはしばらくソファーから立ち上がれなかった。 
 堤防が決壊したように、激しい感情の波が一気に襲ってきて、頭が割れそうなほど痛んだ。
 同じ言葉がずっと頭のなかを回り続けていた。
 
 嘘じゃなかった。
 やっぱり嘘じゃなかった。
 本心だった。
 彼がわたしを想ってくれたことは。

 会いたい。
 シド兄に会いたい。
 会って話したい。
 どうして、ひとりですべての苦悩を抱えてしまったの、と文句が言いたい。
 わたしも重荷を背負いたかったよ。
 シド兄と一緒に。
 なのに……
 もう会えないんだ。

 会いたいよ、シド兄……
 会いたい……