そこまで読んだとき、わたしはその手紙を強く握りしめた。
 文字がぼやけはじめた。
 手の甲で涙を拭い、読みつづけた。

  あの後、わたしたちは、少しの間だけ
  お互いの傷をなめ合うように
  一緒にいたけれど
  そんな関係はすぐに壊れた。
  わたしと別れてから獅童は海外の楽団
  のオーディションを受けて入団したわ。
  再会したのはつい最近。
  彼が病魔に侵されてから。
  わたしは彼に結婚を申し込んだ。
  ひとりで逝かせたくなかったから。

 最後のほうの文字はかなり乱れていた。
 沙奈絵ちゃんも苦しんだのだろう。
 その気持ちが表れている気がした。