木村さんは続けた。
 『オレアンダ』が開店したばかりのころ。
  店を手伝っていた獅童のお母さんが
  すでに奥さんがいた叔父さんと
  愛し合ってしまったんだと。
  そして、獅童をお腹に宿したのだと。

  叔父さんも愕然としていた。
  子供ができたなんて知らなかった。
  彼女は何も言わずに自分の前から
  去ってしまったんだよ、と言って。
  
  ふたりの共通の知人だった木村さんは
  立派な青年に育った獅童をどうしても
  叔父さんに会わせたかったんだと言っ
  たわ。
  そして折りを見て、真実を話そうと考
  えていたと。
  でも、軽率だったと悔やんでいた。
  自分が余計なことをしたばかりに
  ふたりを会わせてしまった、と。