江海ちゃん。
  この間は来てくれてありがとう。
  もう会えないと思っていたから
  嬉しかった。
  この手紙も出そうかやめようか
  ずいぶん迷いました……
  でも、臨終間際の獅堂からあなたへ
  1枚のメモを託されてわかったの。
  彼はやはりあなたに真実を伝えた
  かったのだと。

 整った文字で書かれた手紙はそのように始まっていた。
 真実?
 わたしはその言葉に引っ掛かった。

  あなたは今はご結婚されて、お子さんに
  恵まれた幸せな生活を送っているそうで
  すね。
  もし、もう過去のことには一切触れたく
  ないと思われるのであれば、どうぞ、読
  まずに破棄してください。
  結局、あなたに判断を委ねる形になって
  ごめんなさい……


 真実も何も、言い訳だったら聞きたくないという気持ちもあった。
 でも、シド兄の唐突すぎる心変わりに、ずっと納得しきれない思いも、確かにあった。
 これを読めば、ようやく、彼からその思いからも解放されるかもしれない。
 そう思って、わたしは続けて便せんをめくった。