ようやく彼女と唇を離したシド兄と目が合った。
 
 どうして?
 わたしは必死で、彼に目で訴えかけた。

 でも、彼の目は何も伝えてこなかった。
 わたしへの後ろめたさも
 逆に開き直る気配も
 何もなかった。

 そのことがさらに一筋の光もささない暗い水底に、わたしを突き落とした。