そして。
 あと3日で、約束のクリスマス・イブという日の夜。
 めずらしくシド兄から電話をもらった。

 母に呼ばれ、電話口に行くと、開口一番、彼は「ごめん」と言った。

「24日、無理になったんだ。これから、どうしても実家に行かなくちゃならなくなって。4,5日は帰れそうにないから」
「……そう、なんだ」
「じゃあ、今から出発するから」
「わかった。電話してくれてありがとう、シド兄」
「いや。本当にごめんな」

 電話が切れるとともに、希望の細い糸もぷっつりと切れて、全身から力が抜けていった。
 
 早く年が明けてほしい。
 3学期も終わってほしい。
 1日も早く、高校を卒業したい。
 そしてシド兄と、ちゃんと恋人になって、こんな不安を感じないように、しっかりつかまえておいてほしい。

 部屋に戻り、そのままベッドにうつぶせに倒れこんだ。
 気づいたときには、すっかり夜がふけていた。