大晦日ライブまでそれほど日がなかったから、毎日、練習をする必要があったことはわかる。
 それにしたって、沙奈絵ちゃんは度を越して『オレアンダ』に入り浸っていた。
 まるで、わたしとシド兄をふたりきりにしたくないかのように。

 それでも、わたしはなんとか気を取り直した。
 大晦日までの我慢だ。
 今は練習があるのだから仕方ない。

 それにあのときの約束がある。
 あと2週間待てば、シド兄とふたりでクリスマスの夜を過ごせる。

 ただでさえ、わたしは沙奈絵ちゃんより劣っている。
 この上「沙奈絵ちゃんと仲良くしないで」とわがままを言ってシド兄を困らせたら、ぜったい愛想を尽かされる。

  〈エイミーを大切にしたいんだ〉

 あのときの誠実な言葉と真摯なまなざし。
 それだけをよりどころにして、わたしはぎりぎりのところで、その不安に耐えていた。