その夜。
「沙奈絵ちゃんちに行ったの?」
 わたしはシド兄に電話をかけた。
 
「家の前までな。何、そんな不機嫌な声出してるんだ」
「だって……」
「送ったぐらいで妬いてんのか? ん?」
「だって、沙奈絵ちゃん、……綺麗な人だし」
「エイミーは、おれも彼女の元婚約者みたいに、平気で浮気するような男だと思ってるんだ」
「そういうわけじゃないけど……怒った?」
「いや。安心しろよ。おれはエイミー以外、眼中にないから」

 突然、耳に飛び込んできた、あまりに直球な甘い言葉に、思わず顔がほてった。
 もう、かなわないよ。シド兄には。

「そんなことより、クリスマスどっか行くか?」
「えっ、本当?」
「ああ、店が終わってからだけど、飯ぐらいなら行けると思う」
「嬉しい! 嬉しすぎて倒れそう」
 受話器の向こうで、シド兄は笑った。
 彼はちゃんとわたしの気持ちをわかっていてくれる。
 ちゃんと好きでいてくれる。
 わたしは胸をなでおろした。