「なんか飲みたい気分。叔父さん、アルコールあったっけ、ここ」
「車で来たんだろう?」
「彼に送ってもらう。いいでしょう? 後輩くん」
 沙奈絵ちゃんはシド兄のほうを見て、にっこり笑った。
 えっ、なんでシド兄なの?
 お父さんに送ってもらえばいいのに。
 でも、シド兄はためらわずに言った。
「いいですよ」と。
 
 もう、誰にでも親切なんだから、シド兄は。
 そのときはちょっとむっとした。
 もう、勝手に頼らないでほしい。わたしの彼氏に。
 あっ、でもまだ正式な彼女じゃないんだ、わたし。
 そんなイラつきをどこにもぶつけることができず、歯がゆくてしかたがなかった。