窓をうつ雨音は激しさを増していた。そろそろ帰ろうと思い、わたしは手洗いに立った。
戻ってきたら、シド兄と沙奈絵ちゃんが大学の話で盛り上がっていた。
「へえ、ソルフェージュの西脇先生知ってるんだ。わたしがいたころから毎年、もう今年で退職じゃないかって噂されてたけどね。あのおばあちゃん先生」
「おれが卒業した年が定年だったんじゃないかな」
「えっ、じゃあさ、生協の名物おばちゃんもまだいた? 3回に1回は注文間違える」
「ああ、いたな。そんなおばちゃん……」
シド兄。すごく楽しそう。
わたしと話すとき、あんな顔しないのに……
そんなふたりを見ていると、なんだか胸がモヤモヤしてきた。
「帰るね」
父にだけそう告げて、わたしは店を後にした。
戻ってきたら、シド兄と沙奈絵ちゃんが大学の話で盛り上がっていた。
「へえ、ソルフェージュの西脇先生知ってるんだ。わたしがいたころから毎年、もう今年で退職じゃないかって噂されてたけどね。あのおばあちゃん先生」
「おれが卒業した年が定年だったんじゃないかな」
「えっ、じゃあさ、生協の名物おばちゃんもまだいた? 3回に1回は注文間違える」
「ああ、いたな。そんなおばちゃん……」
シド兄。すごく楽しそう。
わたしと話すとき、あんな顔しないのに……
そんなふたりを見ていると、なんだか胸がモヤモヤしてきた。
「帰るね」
父にだけそう告げて、わたしは店を後にした。