それから、彼は語り始めた。
高2の夏、進路に迷っていたシド兄は、その映画を観て、音大進学という目標を得たのだと。
だがピアノは習っていたけれど、それまで管楽器には触れたこともなかった。
誰が聞いても無謀な話で、当然親に止められたそうだ。
けれど、一度芽生えた情熱はやみがたく、てこでも主張を曲げなかった。
こうと決めたら絶対に引かない彼の性格を熟知していた母親は、最終的に希望を認め、知人だった木村さんにサックスの手ほどきを頼んでくれた。
木村さんは『オレアンダ』によく出演してくれるジャズ・ミュージシャンで、もともとはクラシックを専門にしていたそうだ。
はじめは木村さんも諦めさせようとしたらしい。
でも、シド兄は驚くほど、短期間で上達した。
食事とお風呂と寝るとき以外、片時も楽器を手放さず、ずっと練習していたそうだ。
そして大学に入ってから、めきめきと頭角を現し、何度かコンクールでよい成績も収めたそうだが、音楽の世界は本当に厳しい。
結局、卒業後すぐには、プロの吹奏楽団に所属することができなかったそうで、ここでアルバイトをしながら食いつないでいるということだ。
「きみのお父さんには感謝してるんだ。ここなら好きなだけ楽器が吹けるからね」
やっぱ、すごい人だ。シド兄は。
その彼と知り合えて、しかも妹のように可愛がってもらっている。
そのことが奇跡のように思えた。
高2の夏、進路に迷っていたシド兄は、その映画を観て、音大進学という目標を得たのだと。
だがピアノは習っていたけれど、それまで管楽器には触れたこともなかった。
誰が聞いても無謀な話で、当然親に止められたそうだ。
けれど、一度芽生えた情熱はやみがたく、てこでも主張を曲げなかった。
こうと決めたら絶対に引かない彼の性格を熟知していた母親は、最終的に希望を認め、知人だった木村さんにサックスの手ほどきを頼んでくれた。
木村さんは『オレアンダ』によく出演してくれるジャズ・ミュージシャンで、もともとはクラシックを専門にしていたそうだ。
はじめは木村さんも諦めさせようとしたらしい。
でも、シド兄は驚くほど、短期間で上達した。
食事とお風呂と寝るとき以外、片時も楽器を手放さず、ずっと練習していたそうだ。
そして大学に入ってから、めきめきと頭角を現し、何度かコンクールでよい成績も収めたそうだが、音楽の世界は本当に厳しい。
結局、卒業後すぐには、プロの吹奏楽団に所属することができなかったそうで、ここでアルバイトをしながら食いつないでいるということだ。
「きみのお父さんには感謝してるんだ。ここなら好きなだけ楽器が吹けるからね」
やっぱ、すごい人だ。シド兄は。
その彼と知り合えて、しかも妹のように可愛がってもらっている。
そのことが奇跡のように思えた。