「……ああ……じゃあ、また学校で……」


 …………。


「……じゃあね」


 私……‼

 ……バカ……‼ 私のバカ……‼

 なんで……なんで……いつも、いつも……‼


 私は今にもあふれ出しそうな涙をこらえながら……。

 ……って……。

 ……なにが……。

 なにが、こらえるよ……‼

 ……そんなの……。

 ……そんなの……こらえられるわけないじゃない……‼


 どうして……っ。

 どうして私は、いつもこうなのっ?

 どうして松尾の前……好きな人……の前では素直になれないの……っ?


 こんなの……こんなの……嫌だ……‼

 嫌だよ……松尾……‼







 それから何日経ったか―――。



 松尾と香原さんが、よりを戻したという情報は全く流れてこなかった。



 ……てっきり。

 てっきり松尾と香原さんは、よりを戻すと思っていた。


 ……だけど……。

 だけど、それは違うのかもしれない。
 そう思った。


 松尾はそんな奴じゃない。

 私とのことがダメになったからといって、簡単に香原さんの方にいく、そんなことはしない。

 それが松尾。


 そうだよ。

 そうなんだよ……それなのに……。

 それなのに……私は……。



 ……おそい。

 なにをどう後悔しても、もう……。

 もう、おそ過ぎるよ……。







 そして私と松尾は―――。



 あの日から挨拶以外、会話をすることは全く無くなった―――。









 君を想う





 十年後――。










 ある土曜日。



 その日。

 高校三年生のときのクラスメートとの同窓会があった。


 そのクラスメートとの同窓会は今回が初めてではない。

 同窓会をやるときには、その三ヶ月くらい前に、私のところにも出欠確認の便りは届いた。


 ……でも。

 私は一度も参加しなかった。


 ……というより……。

 参加したくなかった。


 ……だって……。

 だって……参加してしまうと……。

 会ってしまうから……。

 それは……。

 私にとっては……。





 これは同窓会に参加した耀子の情報。


 …………。

 ……松尾が……結婚した……そうだ。

 相手は香原さん、とのこと。





 高校生のときに付き合って、そして別れた二人。

 あれから、よりが戻ることがないまま高校生活を終了。



 松尾と香原さんは、それぞれ別々の大学へ。

 その間、松尾と香原さんは、お互い見かけたことも会ったこともなかったらしい。



 そうして四年が経ち。

 大学を卒業。



 それから三年後。

 それは、まるでドラマのような偶然。
 松尾と香原さんは、ばったりと再会したらしい。





 再開したとき。

 その瞬間は気まずさがあったのか、二人ともよそよそしい感じだったそう。


 でも、そんな状態なのも、ほんの一瞬。

 二人はすぐに話が盛り上がり、続きはカフェで話そうということになった。


 カフェに着いてからも、話の盛り上がりは落ちることなく、思い出話にも花を咲かせた。

 思い出話以外にも、お互いが知らないお互いの大学生活、社会人生活の話。

 それらの話は尽きることなく続いた。

 尽きることなく続いて……。


 そして時間もあっという間に過ぎ……。

 そろそろ帰る時間になった。


 帰る時間になったとき。

 二人は別れを惜しんだ。


 別れを惜しんだ二人。

 二人は、これからも会いたいと思った。


 そう思った二人は、これからも会おうと言い合った。





 これからも会うことを決めた二人は、あることを確認しようと思った。


 それは。

 会うことを決めたということは、連絡を取り合うことになる。

 連絡を取り合うということは、お互いの連絡先を知る必要がある。


 ただ、二人は元恋人。
 すでに連絡先は知っていた。

 だから改めて教えてもらう必要はないのかもしれない。


 のだけど。

 それは付き合っていたときのこと。


 別れてから二人は一度も連絡を取り合っていなかった。


 だから、その間に連絡先が変わっているかもしれない。


 なので二人は、お互いの連絡先を確認し合った。

 二人の連絡先は変わっていなかった。



 連絡先を確認した二人は、また連絡すると約束をして、その日は解散した。