新学期




 四月。


 今日は始業式。

 私は高校三年生になる。

 そして私は新しいクラスの教室へ向かっていた。

 新しいクラスの教室に着き、その中に入った。


遥稀(はるき)‼」


耀子(ようこ)‼」


「やっと遥稀と一緒のクラスになれたぁ。中学三年生のとき以来だもんね」


「そうだね」


 耀子は小学生の頃からの友達。

 見た目はボーイッシュな感じで性格はサッパリとした感じ。


「ねえねえ、そういえば」


「うん?」


「あいつも同じクラスだよ」


 …………。


「……うん、知ってる」


 ……あいつ……。


「私、二年のときも一緒のクラスだったから二年続けてだよ」


 耀子が言っている『あいつ』……。

『あいつ』とは……。





「そう……」


「どうしたの? 遥稀」


「……え……」


「なんか浮かない顔してるから」


「そんなことないよ」


「そう? ならいいけど……」


 浮かない顔……確かに。
 耀子の言う通り、そうなのかもしれない。

 私は今、心の中がとても複雑な気持ちになっている。

 その理由は……わかっている。


「おっ、ここだな、新しいクラスの教室は」


 ……‼




「おっ、うみの。二年に引き続き三年もよろしくな」


「ちょっと、松尾。私の名字は『海野』って書くけど『うみの』じゃなくて『あまの』だって何回言えばわかるのよ」


「わかってるよ、うみの」


「松尾……あんたね……」


「おっ」


 …………。


「よう、遥稀」


 ……松尾……。


「久しぶりだな、中学三年のとき以来だな」


「……うん……そうだね……」


「一年間よろしくな」


「……こちらこそ……よろしく……」


 ……松尾……。

 松尾聖志(さとし)……。あいつも小学校と中学校が同じ。

 ……そして……松尾は私が小学生の頃からずっとずっと…………。


 ……って……ん……?

 ……今……あいつ私のこと……『遥稀』って……。





 * * *


 始業式が終わった。

 私は学校を出ようと歩いていた。
 すると……。


「遥稀‼」


 ……え……⁉

 その声は……。


「松尾……」


「遥稀も帰るところだろ、一緒に帰ろ」


 え……。

 一緒に帰る……?

 松尾と……?


「…………」


 それは……。


「……? どうした? 遥稀」


「うっ……ううん、なんでもない。……ただ……」


「ただ……?」


「……一緒に……って……」


 思わず、そんな言葉が出てしまった。

 なぜなら……。
 なぜなら私は松尾と一緒に帰ることをためらっているから。

 だって松尾と一緒に帰るなんて……。





「遥稀?」


 私が少しためらっていると、松尾は私の顔を覗き込むように見た。


「……遥稀」


 松尾に名前を呼ばれているけれど。

 ためらっているからか、私は、なかなか返事をすることができないでいる。


 松尾は私に一緒に帰ろうと言っただけ。
 それだけで戸惑ったり、ためらったりするのは、どうなのかと自分でも思う。
 のだけど……。


「遥稀……」


 …………。

 ……ごめん、松尾……。
 松尾は、ちっとも悪くないのに……。

 こんな態度をとってしまって……。