憎らしい四十度の空。冬の気配なんかどこかへ消えた、異様なほどの空気の乾燥。
 でも、綺麗だなと思った。
 子どもが乱暴に青の絵の具をぶちまけたみたいな、強烈な青空だった。わたしたちが見上げる先には何もない。未来も過去も、形を成さない。誰と仲良くて、誰と喧嘩したのかさえ、わたしは何ひとつ覚えていなかった。友だちは入れ替わって、また新しい人と知り合って、別れたりした。みんなどこかへ行こうと夢を見て、実際にどこかへ行った人もいれば、どこへも行けなかった人もいた。それがわたしたち地球人だ。遠野ひかりと遠野早苗。二十一歳の公務員と九十歳の老人。