「若者が出て行ってるから、そりゃあいつかは終わるだろう。年寄りだけで国を動かせるわけがない。みんなこぞって火星に新しい国を作ろうとかなんとか言って、実際、国が出来てるんだから、今後の流行りは火星だろうね。若い人間が火星に集まれば、火星の方が発展するに決まってる。限界集落とか見てればわかるさ」
「わたしは、何ができるのかな」

 するとおばあちゃんは、愚問だというように大口を開いて腹の底から笑い声を出した。ガハハハハと、しわがれた声が、湿気の満ちる台風一過の空気に響いて、余計気温が高くなった気がした。

「ばーか。自分のことだけ考えてればいいんだよ。お前はお前の人生の主役なんだから、主役にスポットライトが当たって当然。自分を輝かせる未来だけ考えろ」

 おばあちゃんはそう言うと、私の娘もお前も頭が悪いねえと小馬鹿にしたように眉を上げて笑み、汗でじっとりと濡れているお互いの手をさらにきつく結んだ。

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 タバコは中毒性が強い。そんな当たり前のことをわたしは感じながら、ニコチン臭い息を吐きだす。

「おばあちゃん。わたしが災害救助隊に入ったこと、まだ怒ってるんでしょ?」