「柚葉ちゃん、あまりいいものがなくてねお昼は普通のご飯なんだけど」
「とてもおいしいです」
白米と味噌汁、それと筍と海鮮の煮物。どれも美味しくて優しい味で……幸せな気持ちになる。
こんなご飯、久しぶりだなぁ。
「そう? 良かった。柚葉ちゃんは都会っ子だし、洋風がいいかなと思ったんだけど、お洒落な食材はなくてね」
「いえ、私はこういう和食好きです」
「それは良かった。そうだ明日、近所に挨拶まわりしなくてはいけないんだ。一緒にきてね」
挨拶か……人に会うのは嫌だけど、でも私はお世話になるんだからしかたないか。
「はい、よろしくお願いします」
「堅いなぁ……楽にして、くつろいでいいんだよ」
「う、うん……」
叔父さんは「ごちそうさま」と言うと外に出かけて行った。
「柚葉ちゃん、ゆっくり食べていいからね。私はちょっと出かけるから」
「はい、いってらっしゃい」
美里さんはエプロンを取ると「16時には帰るからね」と言い、家を出て行った。昼食を食べて食器を片付けると、部屋に戻った。だけどやることがなくて、床に寝転がる。
「暇だな……」
いつも何やってたんだろう……父の理想に近づくために必死に机に向かい勉強した自分の姿だ。私って何もないし、やりたいことなんて一つもない。
「新しい学校、どんなとこなんだろ……」
お母さんが嫌いと言ったこの村。確かに何もないし、学校がどこにあるのかわからないし、海しかないし、おまけにお店もない。都内とは全く違う世界だけど頑張らなきゃ。