「疲れたでしょう? 都会とは全く違うかもだけど、なんでも言いな」

「あ、はい……」

「それでも優里(ゆり)から電話きてびっくりしたよ」


 優里とは、私の母で叔母さん……美里(みさと)さんにとったら母は妹だ。


「心配しないでいいんだからね、新しい学校も近いから。あ、でもコンビニはないんだけど」

「はい、母に聞きました」

「そぉ?」


 私がお世話になるお家は、翠川村(みどりかわむら)という小さな村だ。母曰く、何もない場所だと聞いている。


『長閑かでいい場所ではあるからきっと柚葉なら気にいるはずよ』


 ここに来る前に母に言われたことだ。彼女は翠川村が嫌いらしく来なかったけど。

 ……いや、違う。私みたいなのが居なくなって嬉しい筈だ。今頃、喜んでいるんじゃないかな。


「もうすぐ着くでね」


 だんだんガタゴト道になってそれを曲がれば、キラキラ輝く海が左側に広がっていた。それからすぐ、赤い屋根ね一軒家が見えてそこに入った。


「さぁ、柚葉ちゃん。ようこそ」

「ありがとうございます」