「璃空、遅かったな。また寝坊?」

「まぁ……ねみぃ」


 遅刻して、ねみぃはないでしょう……? もしかして、この学校は遅刻する人も許してんの?

 緩すぎでしょ!?


「柚ちゃん、こいつが遅刻常連犯の植木(うえき)璃空(りく)だよ」


 その彼は、大きな欠伸をして学ランのボタンを一つずつ締め出した。


「誰?」

「一条柚葉ちゃん。東京から来た転校生だよ、先週先生が言ってたじゃん」

「あー……さ、母さんが言ってた美里さんのとこの」

「そうだよ多分」


 植木くんは頭をガシガシと掻くと「璃空です」とぶっきらぼうに言った。


「ごめんね、柚ちゃん……璃空寝起きだとちゃんとしないから」

「いや、いいんだけど」


 きっと仲良くはならないと思うし。それに苦手なタイプ。もう関わることなんてないと思っていた─︎─︎……なのに何故。


「ほら、早よ帰ろ」

「……うん」

「早く!」


 何故、一緒に帰っているんだろう。


「柚ちゃん、またね。璃空も、明日は遅刻しないよーに!」

「はいはい、分かっとる。じゃーな」