「では、教科書102ページの最初からを伊藤くん」
教科書、同じやつで良かったぁと思いながら古文の教科書を急いで開くと、そこを見ると前の学校ではもうすでに終わっていた内容だ。
「……あやしがりて寄てみるに筒の中光たり」
竹取物語。
学校では暗記するほど読んだ作品だ。
「はい、ありがとう。じゃあ次一条さん」
「あっ、はい」
うわぁ、この先生わざと私に当てたんだな……顔にでてますよ。転校生だから馬鹿にしてる?
「無理しなくていいのよ。まだあなた最初からやってないだろうし」
私は先生の言葉を遮るとその続きを読み上げた。
「─︎─︎それを見れば、3寸ばかりなる人いとうつくしうてゐたり。翁言うやう、「わが朝ごと、夕ごとに見る竹のなかにおはするにて知りぬ子になりたまふべき人なめり」」
「……前の学校で習っていたの?」
「えぇ、竹取物語は一年生の頃に本で読みました。それに前の学校でもうとっくに終わってます」
そう言って先生は動揺している。出来ないと思っていたのだろうか。
でも元々は進学校だったし、授業が早かったのもあるけど。
「そ、そう……すごいわね」
「褒めてもらえて嬉しいです、ありがとうございます」
「いや、あっ……もうすぐチャイムなるわね! 今日はこの辺にしておきましょう」
あからさまに動揺しながら、先生はすごいスピードで教室から出て行った。これ、授業放棄なんじゃ……?