『次は、翠ノ丘〜翠ノ丘〜翠川大学病院に行かれる方はこちらでお降りください』


 数時間前まで銀色の大きなビルが並んでいたが、今はそんなものはなく緑色の風景が電車から見える。


「柚葉ちゃん、ここで降りるよ」


 叔母さんにそう言われて立ち上がると、電車から降りた。


「はい……」


 私は、一条(いちじょう)柚葉(ゆずは)。ある理由で都会から離れた田舎町に1人でやってきた。
 電車を降り改札を出ると、「おーい!」と手を振って待っている男性がワゴンカーの前にいた。


「柚葉ちゃん、いこうか」

「は、はいっ」


 叔母さんの早足について行くのは大変だ。確か、この人は元々陸上部でランニングが趣味らしい。


「やぁ、柚葉ちゃん。こんな田舎に来てくれてありがとうなぁ」

「いえ……今日からよろしくお願いします、叔父さん叔母さん」

「いやぁ、こちらこそ。さぁ、乗って乗って」


 叔父さんに促されワゴンカーに乗り込むと、叔母さんが助席に乗る。そして、運転席の叔父さんがエンジンをかけるとすぐに走り出した。