彰は体が弱く、ひときわ小さい少年だった。


そのため年下の子からイジメられることもあり、それを中学、高校の子供たちが助けるということが多々あった。


年上の子たちからすれば彰の中世的な顔立ちや小さな体、そして病気がちというところが悲壮感漂う主人公のように思えて、まるでアイドル的存在に見えていた。


一方彰と同い年くらいの子たちにとってはそれが面白くなくて、彰の体を鍛え
てやろうと無理難題を押し付ける連中もいた。


「お前、裏の公園を10週して来いよ」


ある日彰にそう言ったのは施設内のガキ大将、健二だった。


健二は彰と同い年で、施設に来たのは2年前。


ここへきたときにはすでに貫禄があって、一目見た瞬間から彰は健二へ苦手意識を持っていた。


「そんなの無理だよ」


彰は施設の先生からも、病院の先生からも激しい運動を控えるように言われていた。


小学校へあがれば徐々に体力もついてくるだろうから、ゆっくりでいいと。


それなのに、公園を10週なんてできるわけがなかった。


しかし健二はできないでは済ませてくれない。


数人のシモベのような友人たちを左右に従えて、彰に詰め寄った。


「そんなこともできないんじゃ小学生にはなれねーな!」


あと数ヶ月で小学校へあがる彰にとって、それは聞き捨てならない言葉だった。