「話したい人がいるなら、あたし手伝います」


蘭は身を乗り出してそう言った。


彰が心残りを残したまま死んでしまうなんて、そんなのは嫌だった。


しかし彰は穏やかな表情で左右に首を振った。


「そうじゃないんだ。最後に話す相手が蘭でよかったと思ってる」


「そんな、あたしなんて彰さんのことなにも知らないし」


「そう。だから、聞いてくれないか? 俺がどんな風に生きてきたのか。それを蘭に伝えておくことで、俺は蘭の記憶の中で行き続けることができる気がするんだ」


そんなの、話を聞かなくたって彰は自分の中でずっと行き続けることになる。


だってはじめてをあげた人なんだ。


誘拐されたことだって、無理心中させられそうになったのだって、蘭にとってはじめての経験で忘れられるはずもない。


「あたしでいいんですか?」


「蘭がいいんだ」


彰はそう言って、ゆっくりと微笑んだ。