☆☆☆

行為が終わったあと、鍋はすっかり吹き零れてガスは止まっていた。


中途半端に剥いたジャガイモは少し色が変色していて、ニンジンは乾燥し始めている。


それでも使えないことはなかったが、蘭の頭の中は真っ白でこれから料理を作れるような状態ではなかった。


彰もそれは承知の上で、蘭を床に寝かせたまま棚からカップラーメンを2つ取り出した。


今晩はこれで終わらせようと考えているようだ。


彰がお湯を沸かしはじめて、ようやく蘭は上体を起こした。


狭いスペースで、しかも床の上での行為だったから体のあちこちが痛んでいる。


だけどそんなことも気にならなかった。


終わった今もまるで夢を見ているかのような気分だ。


ふわふわと雲の上にいるような感覚が体中をまとっている。


ふと自分がいた床を確認してみると、赤い汚れができていた。


すぐにティッシュを掴んでそれをふき取る。


彰に見られただろうか?


気になって視線を上げたとき、彰と視線がぶつかってしまった。


バレた……。


気まずさを感じて蘭は視線を外した。


でも、思えば行為の最中に彰は気がついていたかもしれない。


自分が始めてであることを。